ブリティッシュパブThe Old Arrowのパブリカン日報

2017年に西荻窪に誕生した、ローカル マイクロ ブリティッシュ パブ「オールドアロウ」パブリカンのブログです。

本当にマズいの?イギリス料理:「ポークパイ」

ポークパイは冷めたパイです。

 

イギリス料理はパイの種類に事欠きません。
お店でパイを提供していてたまに耳にするのが、
「え?パイの中に肉が入ってるの?甘く無いの??」
といった反応です。
パイといえばアップルパイやチェリーパイの様な洋菓子が頭にあって、塩気のある肉が入った「食事」のパイがピンと来ない方も一定数いる様です。

 

英国では古くからパイ料理が親しまれていて、ポークパイの歴史は古く、中世の頃から受け継がれている料理の様です。

 

 

ポークパイは「ホットウォータークラストペイストリー」と呼ばれる、ラードとお湯を使ったパイ生地で豚肉を包んだ冷製、もしくは常温のパイです。
この「温かく無い」というのもさらに違和感を感じる方が一定数いる様ですが、温かくないのには理由があります。

イギリスのポークパイに形が似ている事で名付けられたポークパイハット

 

温かくないパイ

温かくない理由についてはまず現実的な問題として、パイ生地と中身のお肉の間にはブイヨンのゼリー (アスピック) が流し込まれていて固まっています。
ゼラチンは加熱すると溶けてしまいますので、このスタイルのポークパイ (地域によっては温かい状態で提供するものもある様です) は常温、もしくは冷たい状態で食べます。

また、このパイは携行食として人気がありました。
19世紀にはイギリスのメルトンモウブレイという町ではパン屋がポークパイを販売し始め、商業的に成功を収めておりピクニックの良き相棒として重宝されました。

 

 

 

現在の様な保存料や冷蔵方法がなかった時代、おそらく少しでも長くお肉を劣化させないでおくために、お肉を焼き固め、焼いて縮んだお肉と生地の隙間にアスピックを流し込んで、空気に触れさせない様に密閉したのでしょう。

パイ自体が昔はそもそも窯で焼くための器であり、保存容器でした。
日本人にとってパイはそんなに馴染み深いものではありませんが、フランス料理のテリーヌやパテもパイと同じく中世の保存料理であり、ポークパイは「型を使わずパイ生地に包んで焼いた、テリーヌやパテの仲間」とイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。

 

イギリスはパイ生地のバリエーションが豊富

ポークパイの特徴の一つはそのパイ生地です。
日本で一般的なパイ生地は、生地を何層にも薄く重ね折ったパフペイストリーですが、イギリスの一般的なパイ生地は重ね折らないショートクラストペイストリーと呼ばれる生地です。
何となくタルト生地に近い、いかにも「器」といったパイ生地です。

ポークパイには伝統的にショートクラストペイストリーでもなく「ホットウォータークラストペイストリー」が使われます。
古いスタイルの生地で、バターではなくラードを使うためコストの面ではバターよりも気軽に作る事ができます。

 

奥に転がっているポークパイドリーで生地を形成してお肉を詰めて蓋をして焼きます

 

パイの中に閉じ込められた旨味

ポークパイのお肉はひき肉ではなく豚肉を細かくチョップしたものです。
そこにハーブとスパイスと塩を加えるのですが、強固なパイの中に閉じ込められているので旨味が逃げ出す事なくギュッと凝縮されています。

 

焼き上がったパイは一旦冷やされ、上に開いた穴からブイヨンのゼリー=アスピックが流し込まれ、固まるまで再び冷やされて完成します。

他の料理の仕込みとの兼ね合いで、ポークパイを仕込む頻度は多くありません。

 

しかし、数人のイギリス出身者による試食や改良を経て出来たオールドアロウのポークパイは、Today's Specialメニューに登場する度に人気の料理となりました。

わざわざこのポークパイを食べに電車に乗ってくる方もいるぐらいに!

 

ベイクトビーンズやってた頃はこんな感じで提供してましたが、一皿食べたらもうお腹いっぱいです

 

手間の関係で常設メニューには載せられませんが、「本日オススメ」のToday'S Specialメニューに登場した際は、ぜひ食べてみてくださいね。

 

 

本当に「イギリス料理はマズい」ですか?
何のイギリス料理を食べたことありますか?
みんな大好きサンドウィッチやローストビーフがイギリス料理だって忘れてませんか?
「本当はみんな知らない実は美味しいイギリス料理」がワタクシからの正解です。

 

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小さなイングリッシュ パブ (英国酒場)「オールドアロウ」

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